MIYASHITA'S EYE

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認知症についての理解が進む「VR認知症」 
(2017年1月21日)

◆認知症を持つ人から見た世界を疑似体験

ハードもソフトも素晴らしいと評判のサービス付き高齢者向け住宅、「銀木犀」を運営している(株)シルバーウッドの下河原忠道さん。2016年12月、下河原さんが取り組んでいる「VR認知症」をようやく体験することができました。「VR認知症」はバーチャルリアリティの技術を用いて、認知症を持つ人たちが体験している世界を疑似体験するというものです。

下河原さんは、たとえば誰かがカゼを引いたと聞いたとき、「つらいよね、大丈夫?」と声をかけられるのは、自分もカゼを引いた経験があり、そのつらさがイメージできるからだと言います。しかし、認知症は多くの人が体験したことがなく、何がつらく、どう大変なのかがイメージできないことが認知症への偏見につながっているのではないか。そう考えたのだそうです。

そこで下河原さんは、認知症を持つ人が体験している世界を疑似体験するVRを考案しました。認知症を持つ人たちから見た世界をリアルに再現した映像世界を体験することで、そのつらさや大変さへの理解を進めようとしているのです。

◆レビー小体病の幻視体験は衝撃

今回、私が体験したのは2本。 1つは、視空間認知に異常がある方の体験VR。もう1つは、レビー小体病*の幻視のVR。 視空間認知に異常がある方のVRでは、デイサービスの送迎車から降りる一歩が、まるでビルの屋上から足を踏み出せて言われているように感じるという体験でした。 こんな風に見えていたら、どれだけ背後や横から「大丈夫ですよ」と言われても、怖くてとても足を踏み出せない。それが実感できました。

そして、レビー小体病の幻視のVRは、まず、見えている何が現実で何が幻視かわからず、不安になりました。後ろにも何かいるのではないかと、キョロキョロと周りを見回して、その場の会話に集中できません。そうなのです。幻視というと、ぼんやりとした像が見えるのかと思いますが、レビー小体病の幻視は、全く現実としか思えないようなリアルな幻視なのです。

体験後、介護職の方が、「レビーの方に幻視があるのはわかっていたが、これほどリアルに見えているとは思わなかったので、衝撃だった」と話していました。なるほど、介護職の方でもそうなのか、と。

◆認知症に続き、自閉症、ガンなども構想中

レビー小体病のVRは、レビー小体病に長く悩まされている樋口直美さんが監修し、つくられました。この体験会の日、樋口さんもいらっしゃっていて幻視が理解されなかったつらさなどを語ってくださいました。

下河原さんは、いま、自閉症、がん告知など、認知症に続くコンテンツも構想中とのこと。さらに、統合失調症など、いろいろなコンテンツを作っていただき、理解されにくい個人的体験によるつらさを共有できるようになるといいなあと思いました。 事業化されるようなので、これからの展開が楽しみです。 *レビー小体病…現在は、「レビー小体型認知症」と呼ばれていますが、樋口直美さんをはじめ、認知機能の低下が見られない人も多いため、「レビー小体病」と病名を変更した方がいいという意見があります。そのため、ここでは「レビー小体病」という病名で表記しました。

(2017年1月21日)