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軽度者切り捨て。批判だけでは何も変わらない(2013年6月9日)
◆軽度者切り捨ては既定路線
5月初旬、読売新聞記事「介護保険、軽度者向けサービス見直しへ」をはじめ、NHKなどでも介護保険の軽度要介護者に対するサービスは見直しの方向で検討が進んでいるという報道がありました。軽度者切り捨て説は前々からよく言われていたことではあり
ますが、「見直しを決めた」と書かれたこの記事に対する反響(というか、批判・非難の声)は大きかったですね。 その後、5月30日に、神奈川県横浜市で開かれた横浜市訪問介護連絡協議会の設立記念講演に、厚生労働省老健局振興課課長補佐の稲葉好晴氏が登場。「介護保険制度の現状と課題」と題した講演を行ったのですが、この問題への関心の高さもあったのか、平日の昼間であるにもかかわらず500人の会場を埋め尽くす聴衆が集まりました。
この講演の中で、稲葉氏は、「軽度者切り捨てが決まったかのように書かれていたが、まったく決まっていない」と明言。あれれ、そうだったの?と思っていると、「軽度者への生活援助を介護保険で提供する必要があるのかという意見が出ている」、「ボランティアなども活用しながら地域で支えていくことも考えていただきたい」など、やはり切り捨てたいのかと思わせる発言が出てきたり、話は二転三転しました。
結局のところ、軽度者へのサービスな地域に移管していくのは政府方針として示されているとのこと。サービスの効率化・重点化の名のもと、軽度者向けサービスが介護保険から切り離されていくのは既定路線のようです。
◆反対するなら代替策の提案とセットで
稲葉氏が訴えていたのは次のような内容です。
今後、高齢者数は加速度的に増えていく。しかもその中核は、権利意識の高い団塊の世代。払った保険料に応じたサービスを求める声が高まるのは必至だ。推計によれば、今、平均5000円の介護保険料は2025年には8200円にまで上昇する。また、今後さらに老老介護や単身者が増えれば、訪問介護へのニーズは今以上に高まっていく。果たして、現状のままでこれからも在宅介護を支えきれるかどうかを考えてほしい、ということです。
軽度者へのサービス、あるいは訪問介護の生活援助サービスがあってようやく在宅生活を維持できている人は少なくありません。厚生労働省もそのことは重々承知しているはず。それでも、おそらくこのサービスをいずれ介護保険からはずれていきます。現状から何かサービスを削らなくては、もう介護保険財政を維持できないと、厚生労働省は考えているのだと思います。
私も軽度者へのサービスはできることなら持続した方がいいと思います。しかし、これだけ介護保険財政が逼迫し、社会保障費が年々膨れあがっている状況下で、何かを変えない限り、現状のサービスを維持していくのは難しいのではないかということも感じています。
「軽度者切り捨て反対!」というのは簡単です。しかし反対するだけでいいのでしょうか。反対するなら、どうすればこれからも介護保険を持続可能な制度にしていけるかという提案とセットで訴えていくことが必要ではないかと思うのです。
私自身の案は、別の記事に書いてみたいと思います。
*稲葉氏の講演の内容については、宮下が書いた「ケアマネジメント・オンライン」の下記の記事をご覧ください。
・軽度者切り捨てと決まったわけでない!?ーー厚労省稲葉氏講演レポ1
・軽度者切り捨てはもはや避けられないのかーー厚労省稲葉氏講演レポ2