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介護老人保健施設
Workplace----介護の職場
本来は、病院での積極的な治療は必要なくなったものの、在宅での生活はまだ難しい高齢者を受け入れ、入所期間3ヶ月程度を目途として、在宅復帰に向けた身体機能や生活機能のリハビリテーションを行う施設。しかし最近はリハビリ目的での利用ではなく、在宅での生活が困難で、特別養護老人ホームの入所待ちのために利用するケースが多くなっています。
特徴は?
看護師の人数が多く、多くの医療処置は施設内で対応
医療法人経営の施設が多く、施設長は医師であることが決まり。看護師の配置も、介護職員・看護職員総数の2/7程度とされており、総数の1/9~1/14程度の特別養護老人ホームと比べると、かなり手厚くなっています。このため、経管栄養、胃ろう、在宅酸素療法、インスリン注射が必要な糖尿病患者など、医療処置が必要な入所者を受け入れることが増えています。しかし看護師の夜間常駐は義務づけられていないので、できる医療的ケアは限定的。看護師不在の時間帯に介護職が医療処置をやらざるをえないケースも増えていて、ちょっと問題に。
介護職、看護師のほかに理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など機能訓練指導員の配置も義務づけられていて、ほぼ毎日、機能訓練を実施。ただ、行っている機能訓練は施設によってかなり差があります。痛みがある部分をマッサージしたり、関節がスムーズに動かせるよう理学療法士が手足を動かしたりする程度の施設もあれば、歩行訓練を行って定期的に評価し、歩く姿勢を改善し、段階的に歩ける距離を伸ばしていく指導を行うなど、「本来的な介護老人保健施設のリハビリ」を行っている施設もあります。入所するなら、どのようなリハビリを行っているか、事前の確認が大切です。
そのほか介護老人保健施設の大きな特徴としては、医療処置、投薬は原則として施設内で対応すること。このため、病院に受診するのがかなり制限されること※、入院すると即日、退所扱いになります。介護保険と医療保険が同時に使えないので、このような扱いになっているのですが、利用者にはあまり知られていないかもしれません(職員もよく理解していない場合も)。
※介護老人保健施設で対応しなくてはならない医療処置は、かなり幅広く規定されており、現実的には対応が困難ではないかと思われるものも多い。施設内での対応が規定されているにもかかわらず病院を受診すると、その医療費については健康保険を使用できず、介護老人保健施設が全額負担することになる。このため、入所者の病院の受診を嫌がる介護老人保健施設は多い。
居室は?
4人1部屋あるいは個室・ユニットケア
以前は4人1部屋でしたが、個人の尊厳を重視しプライバシーに配慮するため、個室化が進んでいます。特別養護老人ホームは、平成14年以降の新規開設については、原則として全室個室・ユニットケア方式とすることが定められました。これと同様に、介護老人保健施設でも、個室・ユニットケアを取り入れた施設が増えています。
ユニットケアとは、リビングスペースを取り囲むように居室を設け、10人程度の入所者を1つのまとまり(1ユニット)として目が行き届くようにし、一人ひとりのペースに合わせたケアを提供することです。
個室・ユニットケアの場合、どうしても死角が多くなり、職員の数を増やさないと事故防止など充分な対応ができません。そのため、ユニットケア方式の施設では介護保険法で定められた基準より職員の数を増やしているところが多いようです。職員数を増やすことが難しい施設では、職員の負担が大きいという声も聞かれます。
また、個室化によって室料の自己負担額が増えたため、不満を訴える入所者も多いようです。
入所は?
待機者はあるものの、特養よりは入りやすい
終の棲家である特別養護老人ホームとは違い、本来は介護老人保健施設は自宅復帰のための中間施設なので、特別養護老人ホームよりは入所期間が短くなっています。いくつかの介護老人保健施設に入所申し込みをしておけば、比較的短い待機期間で入所することができる場合が多いようです。
ただ、早期の自宅復帰を目指してリハビリに力を入れているところ、特別養護老人ホームと同じように終の棲家となっているところなど、施設によってかなり介護理念、体制に差があります。職場を求めているかたも、入所先を探しているかたも、事前に施設を見学するなどよく確認した方がいいと思います。
職員は?
他職種協働だが、医療職上位?
医師、介護職、看護職、理学療法士等のセラピストが協力して、入所者の自宅復帰に向けての機能訓練を行う施設であるため、本来は互いの専門性を尊重し合い、いい刺激を受けながら働ける職場です。しかし実態としては、医療法人が運営しており、施設長が医師であることもあって、看護師等医療職の発言権が強いところも少なくありません。医師→看護師→介護職というヒエラルキーのもと、介護職の意見より看護職の意見が通りやすく、介護より医療的観点からのケアが強くなる、つまり生活の質より状態の安定を重視するなど病院的なムードの施設もあるようです。
そのあたりも、施設見学に行くなどして、雰囲気を十分に確かめた方がよいでしょう。